モルジブ通信

Sunday, July 29, 2001

モルジブ通信 6 - モルジブ人の教育事情

こんにちは。

モルジブ通信第六号です。

今回は、モルジブ人の教育事情について。

でも、本題にはいる前にちちっと宣伝。
(^ ^)

わたしが好きで書いているこの一方的情報発信メール「モルジブ通信」が、お世話になっている方々のおかげで、ちょっとメディアに広がりが出ました。

一つは雑誌、月刊Diver九月号(八月十日売り)のモルディブ特集の中に、モルジブ通信一号を載せてもらえることになりました。その後も引き続き毎月月刊Diver上でコラム連載されます。書店でチェック、しかも買ってくれるともっとうれしい。モルジブがどんなところなのか、ビジュアルで確認してください。瀬戸口さんの写真だし、きっとモルジブ行きたくなりますぜ。

もう一つは、コロンビアでさんざんお世話になっている同級生の稲富修二くんのホームページに友情出演させてもらえることになりました。アドレスは、
http://www5a.biglobe.ne.jp/~inatomi/
です。彼のコンテンツともども見てみてください。いろいろ勉強になります。彼のような人がこれからの日本を背負って立ってくれるなら、私たち平民は安心できるってもんでしょう。


ということで、本題のモルジブ人の教育事情について。

モルジブ人は教育熱心です。

モルジブ政府の教育に対する歳出は、日本では全歳出の3.6%を占めているところ、6.4%を占めています。学校施設の整備と先生の教育にほとんどが費やされているそうです。それは国の将来の発展のためには教育がとても大事である、と国として認識しているからなのでしょうか。発展途上国で識字率98%を越えている国はそうそうありません。南アジア圏の中ではダントツ一位の高さだそうです。一般的に発展途上国にありがちなよく聞く話としては、そんな学校なんか行っている間に畑の畝のひとつでも耕していろ、勉強なんかで腹はいっぱいにならないぞ、という親がたいていのとこらしいのですが、モルジブでは、ぜんぜん違います。

前回のマイモルジブライフでもちょっと触れましたが、地方の島からわざわざマーレに子供たちを送り出して教育を受けさせるくらいです。それがマーレ人口集中問題の一つの原因ともなっているわけですが、なぜそこまでしてマーレに送り出さなくてはいけないのか。それはモルジブの人口増加問題と地形的原因が絡んで教育システムに影響を及ぼしているからなのです。

モルジブ人の人口増加が急激に起こったため現在人口の約50%が15歳以下、という数字は前のモルジブ通信で書きましたが、まずじゃあ、なぜこんなことになったのか。これじゃあ50年後超高齢化社会で、日本のように、というかさらに、いろいろ苦しむことになっちゃうじゃん、という意見もありますが、こういったアンバランスな人口比は発展途上国ではよくあることなんだそうです。

というか、もともとこんなアンバランス自体、「発展している」ことの証明なんだそうです。モルジブの場合、急激な人口増加の原因は、インフラの整備が以前より進んだことで、安全な水へのアクセスがよくなり、衛生環境が改善され、また医療施設などの整備も進んだことにより乳幼児の死亡率が下がったため、などがあげられます。また、食環境も良くなってきているので母体の健康状態も良くなったことも原因です。日本だってベビーブーム時代があったように、経済状況がよくなり社会が安定してくると、子供できちゃうもんなんですね。

ただ、やっぱりアンバランスなのは将来的にもよくない、ということで、人口増加コントロール政策というのが実施されており、ここ最近の人口増加率はだいぶ減ってきて、ちょうどいいくらいの出生率になっています。

この急激な人口増加が原因でモルジブ政府は15歳以下の子供の教育対策にいろいろ苦しんでいるのですが、主に二つの悩みがあげられます。

一つは、学校の建物をどうするか。点々と散らばっている200島もの有人の島に、それぞれ学校の建物を建てること自体タイヘンであることは想像に難くないでしょう。しかも、その急に増えてしまった子供たちの数に対応していくとなると、学校を建てても建てても追いつかないのと、建てたとしても数年後にはそこまでの子供の数がいなくなるわけだから、いまだけなんとかしのげばその後は回していけるのでは、という考え方もあって、「いま」どうするか、の対策が要されています。

もう一つの悩みとしては、先生不足。急激に増えた生徒の数に対して先生の数が圧倒的に足りないのです。学校の建物を建てても中で教える先生がいないんじゃ、学校として成り立たないでしょう。また、先生のトレーニングシステムが需要に対してきちんと追いついて整備されていないため、必要とされている資質のある先生がなかなか育っていないのも原因となっています。「いますぐ」必要なのは、どちらかというとこちらの対策でしょうか。

ここで少し、モルジブの教育システムを見てみましょう。

モルジブの教育システムは、6歳から1年生、は日本と一緒なのですが、小学校にあたるのは7年生まであります。そもそも教育システムが違うので「小学校」と呼んだりするのが正しいか疑問なのですが、分かりやすくするためにまあいいとすると、13-15歳が行く8年生から10年生までが日本の中学校にあたり、高校にあたるのが、16-17歳が行く11-12年生となります。「年生」というのもめちゃめちゃ日本はいってますが、こっちではすべてgrade 7(グレードセブン)とか、グレードで呼ぶそうです。

小学校レベル終了まではみんな一緒に順々にグレードのレベルがあがっていくのですが、中学校レベルのグレード8-10になると、毎年年度末テストがあり、そのテストである程度の成績がとれないと、もう一回同じグレードレベルの授業をやり直さないといけないそうで、しかも2年目同じテストをパスできないと、卒業できないまま学校を去ることになるそうです。日本のように誰でも中学卒業できるってのとは違います。

また、グレード10終了時には全員Oレベルというテストを受けないといけないことになっていて、そのOレベルでいい成績をとれないと次のレベルのグレード11に進めないので、日本のお受験並みにきっちり勉強しないといけないわけです。モルジブでも子供のうちからけっこう厳しい世の中を味うことになっているんですね。塾とか家庭教師とかも存在するようで、金持ちの家の子はそうやって学校以外のところでも勉強をしてさらに上を目指していくようです。

グレード10からOレベルテストを受けていい成績を取ってグレード11に進む進学率は、10%くらいだそうで、けっこう競争率激しいです。残りの90%はそのまま社会人として旅立っていかなくてはいけないのですが、それって16歳ですよ、グレード10終了時って(順調にいったとして)。

そんなに若くして世の中に出なくてはいけないとなると、労働市場でのいわゆるskilled laborとしてみなされるには、すこし厳しいものがあります。実際、skilled laborを必要とされているツーリズムや、先生、医者などは、expatriateといって外国人労働者が占める割合が高くなってしまっています。

また、グレード10卒業まで行き着かず年度末のテストで2ダブしてしまって学校を去ることになってしまったsecondary school leaversを救うための労働機会造成も一つの課題となっており、モルジブ政府としては、いまの教育システム自体を改善する必要性にも迫られているようです。いくら識字率が高くても、スキルを持った人材が育たないシステムだと、国としての発展にも限界があるってことです。

話を教育システムに戻すと、その後、グレード11に進んだ学年トップ10%の子供たちがグレード12まで終了すると、今度はAレベルというテストを受けるそうです。Aレベルテストは、大学レベルにあたるグレード13-17に進学するのに必要で、いい成績を取って始めて次に進めます。カレッジ(短大)だとグレード13-14までで、それ以上だとグレード15-17、で、終わりだそうです。すべて順調に進んで卒業だと23歳になってます。

現在、モルジブにはグレード12までの学校しかありません。しかもマーレに一つだけしかグレード11-12レベルの教育を提供する施設がないのです。そして、それ以上の学位が欲しい人は、海外に留学しなくてはなりません。なので、モルジブ人の、家が金持ちでかしこい若者たちは、たいてい、近くてスリランカ、マレーシア、遠くてオーストラリア、すごく遠くてイギリス、といったところに早い子はグレード11の時から留学しているようです。

わたしの上司の子供たちはスリランカに家族ごと留学(8歳から23歳までの男四人兄弟)しています。うちのファミリーの親戚はアメリカにパイロットになるために留学とかしている子もいるようですし、ここんちの一番上の息子19歳もマレーシアに留学しているのでわたしは会ったことがありません。ということで、モルジブの世の中を動かしている人たちの家庭の子供はやっぱりそれなりの教育を受けているってことです。

グレード10までをなんとかこなす人と、グレード11以上の教育を受けられる人と、そこでまた大きなdisparityがでてくるんですね。

ところで、平均的なモルジブの家庭の話として、やはりアトールの人々たちのことに触れないわけにはいかないでしょう。事実、そのグレード10までをなんとかこなす人と、グレード11以上の教育を受けられる人のdisparityには、地方で育つか、マーレで育つか、が大きく関係してくるのです。

地方の島々には小学校、つまりグレード1-7の学校、は、それぞれ需要を満たす程度に存在しています。現在マーレ含めて230校ほど学校施設があります。それはモルジブ政府ががんばってきた結果のようですが、それでも地方には建物がない学校、建物があってもトイレがない学校とか、黒板の代わりに砂を使う学校などもまだあるようです。

中学校にあたるグレード8-10レベルの学校は、それぞれの島にあるわけではなく、アトールごとに何校かある程度で、いま現在モルジブ国内で全部で26校程度、というようにいきなり数が10分の1くらいに減ります。そしてさらにグレード11-12の学校となるとマーレに一校しか存在しないんだそうです。現在9-10万人くらいが学校に通う年なのですが、全部で250校くらいしかない施設でその人数に授業を提供しなくてはいけない事態というのは、なんか想像を超えてタイヘンそうですね。

地方とマーレの学校施設の差はそのファシリティだけでなく、授業の内容でも大きな差があります。マーレの小中学校の授業はすべて英語で行われるのですが、アトールの学校では英語のできる先生が不足しているため、すべて英語で行うわけにもいかない事情があります。そこでマーレの小中学校に通った子と地方の学校に通った子で将来的に大きな差が出てくるのです。

特に、Oレベルテストを受けてグレード11-12に進む時点で英語の能力に大きな差がでてしまうことになるので、アトールに住む教育熱心な親たちは、いずれ上を狙うなら、まだ幼いうちから子供たちを親元から離してなるべく早い時期にマーレに送りたがるのです。

ウチに住んでいるアフマドくんとシルミナちゃんは、8歳くらい(グレード3)から親元を離れてマーレの知り合いのここのウチに住ませてもらい、学校に通っていたそうです。アフマドくんの島は26あるアトールの中でも一番北の離れたアトールにあって、当時のドーニでマーレまで出てくるのに8日もかかったそうです。

そうやって、地方から子供たちがマーレの学校に通うためにどんどん集まってきた結果、いまマーレに8件あるグレード8-10の学校では、一校につき三学年分で3-4000人の子供たちが通っているそうです。かぎりある校舎でその大人数所帯を回していくため、現在モルジブではシフト制をとっています。例えば、グレード8は朝7時半から、グレード10は午後六時からなど。ただ、そのシフトをしなくてはいけないため、限られた時間で決められたカリキュラムをこなすのがまたタイヘン、といったこともあるようです。

だったら、マーレだけでなく地方でも英語で授業が出来るよう、先生をトレーニングすればいいじゃん、ということも言えるのですが、実際、そういうことは海外協力隊員的な人たち(英語ネイティブのボランティア, VSO)の地方派遣などによりすでに行われているのだそうです。でもただ絶対人数的に需要に対して供給が少ないため、地方の各島々全部にまで英語の出来る先生が行き届かないのです。先生の研修だって毎年マーレで400人あまりずつ行われているけど、ホントに追いつかないんです。だって、英語がただ出来ればいいってわけではなく、英語が話せて、かつ理科、社会や数学などを英語で教えられなくてはいけないわけだから、そうそう簡単にいくわけがありません。いま現在、マーレでさえグレード8-10の先生たちはモルジブ人ではなく、インド人やスリランカ人またはマレーシア人などが大半なんだそうです。それだけの資質を持った先生がモルジブ人ではいないってことです。

でも小中学校通して英語で授業を受けて育ったおかげで、マーレにいる今時の若者のたいていは英語が話せます。日本のたいていとは大違いです。その若者たちが大きくなったときに、やっと英語で社会や理科を教えられる先生になっていくのでしょう。もうあと少し時間が必要ですね。

ひとつ、モルジブの教育システムの穴としてあげられるのは、そうやって優秀でさらに上の教育を受けたい子供たちには、海外留学という手しかないため、優秀な人材の海外流出が多い、ということです。せっかく海外でいい教育を受けてモルジブに帰ってきても、ある仕事は漁業とツーリズムくらいだし、知恵がつくとモルジブの現状にいろいろ不満がでてきたりするわけで、帰って来たくなくなってしまうんだそうです。海外でもっといい生活をさんざんしてくるわけですからそれも当然でしょう。

モルジブが国として発展していくためにはその優秀な人材を国内に蓄えて、優秀な頭脳を国のために使ってもらわなくては意味ないのですから、その流出に歯止めをかけることも早々の対策が必要でしょう。

特にいまモルジブが必要としている人材は、経済学者、環境問題の専門家、政府経営の専門家など、スキル・知識を持った人材です。いまは国際機関の協力を経て海外の専門家の知識や技術を「キャパシティビルディング」と称して移転してもらっていますが、ゆくゆくはモルジブ人自身でそういったスキル・知識を伸ばしていかなくてはなりません。

現在、モルジブ政府では理科や数学などの理系教育のカリキュラム強化を検討中のようですが、やはり早々にグレード13-17レベルの教育機関もモルジブ国内に作ることも大切でしょう。大学などの研究機関が国内にあると、知識の蓄積度合いがぜんぜん変わるだろうし、モルジブ人自身のインセンティブにもなるだろうに、と思うのはわたしだけでしょうか。それともそうしたいのはヤマヤマだけど、そこまでの人材がまだ育っていないからできない、とされているんでしょうか。でもそれこそ、国際機関の協力があるうちにいい教育機関を築き上げておく方が、先生などの人材提供協力だって得やすいだろうに、と思ってしまうのですが、きっとそこに国際機関が出来る範囲の限界があるのでしょう。それか、発展途上国では、先進国にいた時には考えもしなかったことがいろいろあるもんです。きっとわたしがまだ知らない段階をいろいろ踏まなきゃいけないんでしょう。


ということで、今回はここまで。


n

Sunday, July 22, 2001

モルジブ通信 5 - マイモルジブライフ 


こんにちは。

今回のモルジブ通信は、よく聞かれる「いったいどんな生活しているの?」について。
当然普通の観光客とは違う生活です。モルジブ人の生活めちゃめちゃはいっています。普通のリゾートに行っただけでは、こんなディープモルジブは見れません。またわたしがローカルファミリーの家にホームステイしているって点でも、マーレに一人暮らししている他の日本人よりディープモルジブしている気がします。

ちなみにNYで学生生活しているはずのわたしがなぜモルジブにいるのか、モルジブで一体なにをしているのか、まだナゾだと思っている人がいるらしいので、ちっとここでまた説明を。

わたしのNYの学生生活は一年が終わっていまは夏休み中。あと一年学生生活が残っています。アメリカの大学は五月半ばから八月いっぱいまで三ヶ月以上が夏休みで、新学期が始まるまでなにもすることがありません。なので、学生ちゃんは、その長い休みを使って「インターン」という社会人生活に慣れるためのいわゆる「お試し期間」的な社会勤めをするのが普通です。単位にもなります。

すでに8年も社会人生活やったわたしが「慣れるため」とか「お試し」とかされても困っちゃいますが、ヒマしているのも困るので、インターンでもやるか、ということでやってます。

アメリカの会社ではその「インターン」を受け入れるための制度が整っていて、ちゃんと就職活動のように面接とかありますし研修制度があるところもあります。会社によっては、そこを「青田」の場として使っているところもあって、夏の間きちんと仕事して「こいつはできる」と思われた人は、そのまま卒業後、そこの会社に就職することが出来ることもあります。そういう会社はたいてい給料の払いがいいです。また、会社によっては、インターンを都合のいい金払わなくてもいいバイトちゃん、という風に捉えているところもあります。三ヶ月働いても給料なんてもらえません。なので、よっぽど勉強になる仕事か履歴書に誇りを持って書けるような仕事でないと、なんかうまくぼられた気持ちになります。

で、わたしがいまやっているのは、国連開発計画(UNDP)のモルジブ事務所というところでのインターンです。いままでモルジブ通信で書いてきたような社会問題をなくすためのプログラムの管理・運営する役をもらってます。国連関係のインターンは、「こいつはできる」と思われてもあとの就職にはつながらないし給料ももらえないし、ホントにボランティア精神でのぞまないとやってられないポジションです。まあわたしの場合、もとが広告屋だっただけに、ぜんぜん違う世界が見れて、勉強にはなってますけどね。

というわけで、べつにモルジブで遊んでいるわけじゃないです。勉強しているんです。ボランティアやっているんです。遊んでもいますけどね。

そしてそのUNDPでのインターン生活およびモルジブ生活はどんなんか、というと、オフィスは朝七時十五分から午後二時半まで。朝六時におきて六時五十分に家をでています。わたしが住んでいるのはマーレの隣の島のビリンギリというところなので、ドーニ(船)に10分乗らなくてはいけません。ビリンギリは一周歩いて20分くらいの島で、わたしの家のあるところはドーニ乗り場のまさに島の反対側なので歩いて10分くらいかかりますが、わたしは自転車で通っているので5分です。そしてドーニ10分。マーレについてからオフィスまで、自転車で10分。

オフィスアワーに昼休みはありません。二時半までごはんが食べられなくてお腹が空きます。でもティータイムというのがあって、ちょっと十五分くらい抜け出して、近所のカフェに「ショートイーツ」というものを食べに行くのを許されています。ショートイーツというのはモルジブ人のスナックで、いろいろ種類がありますが、たいてい小麦粉で作ったカワで、魚をほぐしたフリカケみたいのとココナツの実とチリ(唐辛子)をまぜたものをまいて、揚げてあるか焼いてあるか、みたいなもんです。スナックといってもたいてい甘くないです。

甘いのは、ドラヤキの皮みたいのかドラヤキの皮にココナツが混ざったものかくらいです。ときどきフレンチトースト的なものをみかけることもあります。あ、でもメキシカンの「チュロ」的な小麦粉と卵と砂糖を混ぜたヤツを揚げた揚げパンの小さいモノもあるし、ドラヤキサイズのホットケーキみたいにふかふかしたモノもあるわ。やっぱけっこういろいろありますね。でもたいてい、甘いモノ系全種類が一堂に会することはなく、そういうモノは毎日一種類か二種類くらいしか置いていてくれません。

わたしは甘いスナック好きなのですが、カフェではマイナーな存在です。だってカフェは男の社交場なんだもの。どこいってもモルジブ人の女の人がカフェにいるのを見たことがありません。(観光客が来るような西欧風のいわゆる私たちのいう「カフェ」的な場所には女の人もいますけどね)。こっちのカフェは、外からはなんの店か中が見えないようになっていて、入ると薄暗くせまい中にデパートの食品売場みたいなのの小さいバージョンのショーケースにショートイーツが並べられていて選べるようになっています。選んで席について「コーヒー」か紅茶を頼んでそれを食べます。こっちの「コーヒー」とはインスタントコーヒーに粉末ミルクをまぜたカプチーノ的飲み物のことです。ちなみにこっちの「牛乳」もインスタント牛乳、というか、粉末から作って飲みます。一般家庭に牛乳パック的「生」は存在しません。

お昼ご飯はたいていお家に帰ってから、です。なので仕事がたいてい二時半過ぎに終わって、インターンには残業なんてないのでさっさと帰って三時過ぎ。それからごはん、です。わたしが住んでいるところはローカルファミリーのお家なので、家に帰るとごはんが用意されています。

ごはんのメニューは、毎日カレー。ツナカレー、リーフフィッシュカレー、ベジタブルカレー、パンプキンカレー、ブレッドフルーツカレーなど、中身は色々あり、カレーソースにもケチャップがちょっとはいったヤツ、ココナツミルクがちょっとはいったヤツなど、いろいろあり、組み合わせによってバリエーションがでています。カレーを食べるご飯の他に、ロシ、という小麦粉と水でこねて焼いて作るクレープ状のモノもあります。味はナンみたいなのですが、役目はクレープで、カレーを食べるのに使います。あとはときどきガルディアという日本食でいうところのカツオ出しのスープみたいなモノもでます。それは辛くないし、味もシンプルで、素材の味で勝負なので、日本人にはたまらないです。お吸物みたいなものですが、カレーのようにごはんにかけて食べます。

カレー以外に、キャベツの千切りのマヨネーズ和え、か、トマトを切ったモノ、キュウリを切ったモノ、が典型的な生野菜です。レタスとかは高価すぎて普段の食卓にはのりません。すべて輸入ですから。フルーツはバナナくらいですが、たまにオレンジやリンゴも出ます。でもそれも高級な食べ物です。南の島だからフレッシュフルーツジュースがおいしいんだろう、とか思われがちですが、そんな高級なモノ一般家庭ではでません。ここんちでやったウエディングパーティーの時でさえも、濃縮ジュースのもとを水で割ったジュースでした。ひと昔あった、お中元によくあるカルピスとともについてくるオレンジジュースのもとみたいなモノです。水でさえも高価な飲み物なので、それに味がついているとなるとさらに高級感が出ます。

ウチにはいつも家族のごはんを作ってくれる子が二人います。シルミナとアシア。シルミナは20歳、アシアは13歳。二人はファミリーではないのですが、ファミリーの知り合いの子供だそうで、より高い教育を受けようと、マーレの学校に通うために地方のアトールから出てきています。ただでこの家に泊めてもらう代わりに家事の手伝いをしています。今度のモルジブ通信の教育事情特集でも書きますが、これはマーレではごく普通のことで、よりよい教育を求めて、アトール(地方の環礁)の教育熱心な親たちは子供をマーレに送り出すのが普通で、その時の住居を知り合いに頼り、無料でおいてもらう代わりに労働を提供するんだそうです。ここのウチにはもう一人、アフマドという19歳の男の子もアトールから出来ていて、家のメンテナンス担当として働いています。それ以外にご主人のお友だちで、アトールで「ガージ」という裁判官のような立場のえらい人も、数週間前から英語を学ぶためにマーレに出てきてここんちに泊まっています。いまこの家にはわたしもあわせて総勢13人が住んでいます。

わたしが住んでいる島、ビリンギリは「環境にやさしい住宅用の島」として、もともとリゾートがあった跡地に開発されました。車は島に公共用としてタクシー2台とトラック1台しかありません。バイクは存在しません。みんな歩きか自転車で移動します。島の周りが全部ビーチで、ウチの前もビーチです。オフィスから帰ったあと、なにをしているかというと、たいていモルジブ通信書いているか、メール書いているか、屋上で潮風に吹かれて本読んでいるか、前のビーチで泳いでいるか、島の反対側のビーチでシュノーケリングしているか、です。こんな生活していると東京とかNYとかの都会の生活に戻るのが怖くなります。

都会といえば、モルジブ一都会のマーレは、道路は全部舗装、ここ二、三年の間に高層(といっても5-6階建てくらい)ビルも建つようになり、どんどん都会の街らしくなってきました。10数万人住んでいるところに郵便局は一軒だけ、とか、いろんなものの選択の幅も数も少ないですが、とりあえず先進国の生活で必要なモノはなんでも手に入ります。なので、マーレを見ているだけでは、発展途上国に見えません。それもこれもここ数年の急激な経済発展によるたまものだそうです。それにツーリズムが大きく貢献しているのは言うまでもないです。

でも地方の島々で仕事して生活してきた日本人の協力隊員的には、マーレのモルジブ人はここ数年で妙に金を持って都会派ぶってスレてきているから、マーレに来る度に地方に帰りたい、と思ってしまうそうです。地方の島のモルジブ人は人が良いそうです。それって、日本だって東京の人は冷たい、田舎の人は温かい、とかいうのと同じですね。

わたしが住んでいるうちのファミリーは都会の人で、しかも金持ちですが、人は良いです。一般的に、モルジブ人はきれい好きだし、「和」を大切にするし、義理人情に厚いし、世間様を気にするし、すごい勤勉でよく働くし、教育熱心だし、なんかいろんな意味で日本人に近い精神を持っている気がします。海に囲まれた島国で他国の影響をあまり受けてこなかったという似たような歴史を持っているからかしら、なんて。

しかも、モルジブ人の言葉であるディベヒ語も日本語に似ています。たとえば、主語をはっきりさせないあいまいさとか、一つの単語だけでも会話が通じるところ、文字は発音を表すだけ、とかとか。。。。「アフマド君どこいった?」と言いたい時、英語だったらWhere is Ahumad? とかになりますが、ディベヒ語だと、「アフマド、コバ?」となります。be動詞とか関係ありません。順番を「コバ、アフマド?」と変えても意味が通るところもなんか日本語ちっくです。英語で順番適当に変えるってのはあり得ませんね。

もう一つ、例えば、「マーレに行ってくる」って言うとき、英語だったらI am going to Male'.と、「I(わたし)」がマーレに行くっていう、日本語には入っていない主語が必ずついてきますが、ディベヒ語的には「マーレ、ダニ(行く)」と言うだけですみます。「キミ、マーレ行くの?」というのも「マーレ、ダニ?」ですみます。慣れると英語より、ディベヒ語の方が楽になります。わたしもこの二ヶ月で簡単会話が出来るようになりました。わたしの英語もディベヒ入るようになってきました。

週末は、ここのウチにいろんな親戚の人が訪ねてきます。ビリンギリというのは、マーレに住んでいるローカルの人にとっても週末ちょっとビーチに行こうか、という対象になってます。日本で言うところの湘南みたいなもんですかね。か、お台場かな。なので、マーレからいろんな親戚の人が週末のたんびにここのウチに遊び&くつろぎにやってきます。ただでさえ普段から人の出入りがはげしく、平日オフィスから帰宅すると知らない人がリビングに座っている、とかめずらしくないので、ちっとやそっとでは驚かなくなりましたが、それでもここへ来てすでに2ヶ月経ったいまでも全部の親戚のカオを覚えることが出来ません。というのは、ここのご主人のナシームの兄弟は10人、奥さんのアビダの兄弟は5人、そしてそれぞれ平均5人の子供を持っているので、それが入れ替わり立ち替わりなんか似たようなカオしてばらばら来るので、ぜんぜん誰がどの家の子で誰の兄弟だったかなんてとても覚えられないわけです。にっこり「はろー(^ ^)」、なんていかにもキミが誰だか知ってる的にアイサツとかはしてますけどね。

そんな大人数の家族はモルジブ人では当たり前で、しかも習慣として親戚を大事にするため、そういった親戚づきあいがけっこう大変なようです。モルジブ人の家族・結婚事情についてはいつかのモルジブ特集で書ければと思っているのですが、若くして結婚して相手方の家に入った嫁さんはたいてい家族づきあいが重荷で離婚につながるようです。モルジブ人の離婚率60%という世界レベルでもかなり高い数字が、その家族づきあいの大変さを物語っているでしょう。

この間、六月にナシームのお姉さんの二番目の息子が24歳にして結婚しましたが、離婚率60%と知っているわたし的には複雑な気持ちでした。しかも、その男の子、嫁さん一人自分の家族の中に置いて、七月からマレーシアに留学しちゃったんです。嫁さん、義理の家族に囲まれて一年一人でやっていかなきゃいけないそうです。これはやっぱり、離婚につながるか、、、、?。

ここの国の週末は、金曜日と土曜日で、オフィスのある平日というのは日曜日から木曜日です。それは金曜日がイスラムの休日にあたるためで、金曜日はちょっとスペシャルな日です。いつもより長めのお昼のお祈り時間と、普段はバラバラにとるランチも、金曜だけは家族が一堂に会して食べます。訪ねてきた親戚もあわせて、ね。そして金曜日用のごはんが用意されます。その日の主食はカレーではなく、たいていカレー味ピラフと焼いた肉系(ソーセージとかサラミとか)、唐揚げした魚(これは日本食でもあるのとまったく一緒)、ココナツ系のデザート。この日はスペシャルなので水以外にオレンジジュースとかコーラも食卓に並びます。

でもテーブルが足りないので、男の人が先に食べ、女の人があと、という順番は変わりません。それでもたくさん親戚がいるときには、男の人の中でも優先順位のランクがあり、年の順で子供はあと、でも男の子供は女の人グループの前に食べる、女の人グループの中でも年の順だし、前述したアトールから出てきている親戚じゃないシルミナとかアシアとかは一番最後にご飯を食べるので、一番最初グループで食べるわたしとは、一時間くらい時差があります。なので、間に食べた人たちの量によってはシルミナたちまでごちそうが残らないこともあるかもしれません。ここになんとなく貧富の差を見る気がします。


あとは、水がすごい高い話だとか、天井扇風機の偉大さだとか、まだまだ書きたいことはいろいろあるのですが、文字量が多くなってしまったので、今回の通信はここまで。

興味のある人はメールで質問ください。写真もホントはいろいろあるんだけど、いっぱい送ると重いしね。

今後の特集予定としては、モルジブ人の教育事情、モルジブのメディア事情と若者文化、と続きます。また、八月のアタマに地方の島に行くかも知れないので、そのご報告通信かな。あとはモルジブの環境問題についても質問が多いので書いてみたいです。「ホントにモルジブは沈むのか!?」についても。

どのみちモルジブには八月の半ばまでしかいないので、あと何回かで、モルジブ通信も終わりです。モルジブ旅立っても書き続けることが出来ないことはないのですが、データ的なものにアクセスできなくなってしまうので、どうかな、と思ってます。あとは、都会に戻ってしまうともっと楽しいことがいろいろあるので、モノかいてる時間がなくなるかも、って気もするしね。

とりあえず、今回はここまで。

ではまた。

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Sunday, July 15, 2001

モルジブ通信 4 - ツーリズムについて

こんにちは。

モルジブ通信4号です。

なんか、こむずかしい話が続いたので、今回は、ちっと楽しい、南の島らしい話ももりこんでみます。やっぱ、もとサイパンで食ってたマリアナチーム代表としては、ツーリズムを語らないわけにはいかないでしょう。まだ残っている夏休みのデスティネーションとして、みんなを行きたくさせちゃおっかなあ、と。

モルジブのリゾートは現在90件ほどあり、ベッド数15,000以上、稼動率平均70%となっています。年間の観光客数は40万人。サイパンとそう変わらない数字ですが、来ている客はヨーロッパ系が多い(80%)です。内訳的には、ドイツ人20%、イタリア人系20%、イギリス人14%、フランス人5%、で、日本人はというと、10%、といった具合です。その他アジア、オーストラリア、南アフリカ、と続きますが、やっぱり地球の裏側なせいか、アメリカ人があまりいません。だからモルジブはなんかセンスがいいイメージなんですかね。

ちなみに私がNYでアメリカ人の友達に「夏休みはモルジブ行くんだー」とかいっても、Maldivesが読めない人もいたくらいです。モルダイブ、モルディーブス、モ「る」ディブス、いろいろ言われました。

また、やはり地の利でしょうか、サイパン・ハワイとかに比べると日本人率もかなり少ないですね。けっこう距離的にも遠い(インド洋のインドの向こう側)ので日常を脱出するのにエイヤッ感があるのと、日程的にも余裕がないとのんびり感がでないので、やっぱり新婚旅行が圧倒的に多いです。乗り換えのシンガポールでは、空港で待っている人たち私以外みんなカップルでした。

モルジブのリゾートはオーナーの出身国によって全然カラーが違うので、カップルで来る人以外のお姉さまグループたちには、イタリア人のスイートな男の子がいるリゾートがいいわ、とか、フランス人のキュートな男の子がいるリゾートがいいわ、とかご希望によっていろいろ選択肢があります。そしてやっぱりフランス人系リゾートはお部屋ものもセンスがいいしワインが美味しい、とかイタリア系は夜バーに行くとワイワイにぎやかだ、とか、ドイツ系はパッケージとかあっていろいろ経済的、だとか、お国柄によってリゾートの雰囲気もだいぶ違うようです。

でも日本から来るにはパッケージツアーがお得なので、日本人が行くところは、たいてい「大型数こなし系リゾート」になりがちで、他の日本人もたくさん来ているので「なんだかな」感があるかもしれません。日本人率40%とかいうリゾートとかにいっちゃうと、非日常感もラブラブ感もどっかふっとんじゃいますよね、こんなところまできて。

しかも、モルジブのリゾートは一島につきひとつのリゾートしかないので、もしそのリゾートがダメリゾートだった場合、どこにも逃げられないです。なのでそのリゾートの雰囲気とかけっこう大事で、安っぽいところに行っちゃうと、安っぽい気持ちになって帰るはめになると思います。

海のアクティビティだけじゃなくて、お部屋でゆっくりするのが好きな人にはお部屋の雰囲気とかやっぱりすごく大事ですもんね。なので、私がお勧めするのは、パッケージじゃなく、このリゾートホテルに行きたい、と指名してアレンジしてもらう旅行です。タカビーなリゾート好きな私としては、ソネヴァフシとかニカホテルとか、小さいけどすみずみまでこだわった雰囲気のいいリゾートが魅力的かな。この間の五月売りのフィガロでも、モルジブに新しくできたリゾートが出ていましたが、ああいうところも行ってみたいですね。

ということで、せっかくのモルジブ旅行、じっくり練ってきてから来てください。

モルジブのそういったリゾートは、私がいままで書いてきたような数々の社会問題なんてみじんも感じさせない、別世界です。それはまさにモルジブ政府による「地形」を生かしたうまい戦略で、1000島余りある無人島をすこしずつリゾートホテル会社にリースしてそれぞれ開発させる、そしてそういったリゾートはローカル的には禁じられているアルコールも許されているなど、モルジブの現実社会とは切り離した西欧の世界作りに貢献しています。

ローカルの生活が見えない分現実感がなくて、その非日常感が、なにもしないことを楽しむ本格リゾート派の人にとって理想的な空間を作っていますが、観光好きな人にはなにも見るところはないということになりますので、そういう人にはモルジブは向きません。ホントは、バリのようにローカルの生活が溶け込んだ世界が見えたら見えたで、きっともっと魅力的なディスティネーションになるのにな、とわたし的には思っているんですけどね。でもリゾートで毎日魚カレーってワケにもいきませんけどね。

その無人島リース戦略は、非日常感が作れるリゾートにとっても、また逆にローカルにとっても好都合に働いており、例えば、アルコールなどはもとより、ビキニなど「男を惑わす悪しきもの」的習慣が、ローカルの目になるべく触れないように制限できるなど、文化的交流によってローカルの人たちが受けてしまう影響を最小限に抑えるのに役立っています。だってやっぱりナイスなビキニとか他の国の人が着ているのを見たら、モルジブの人だって、私もこんな布かぶっていないで、ビキニ着て泳ぎたいわ、とか思ってしまうわけです。だってそのほうがダントツにかわいいじゃん。でもそれをモルジブ政府は「国際文化交流による自国の伝統の崩壊」と呼ぶのです。

モルジブのツーリズムが発展し始めたのは1970年代。年々着実に伸びてきており、今では、観光収入はモルジブ政府の最大の歳入源(30%)であり、漁業をおいこして最大の国家産業となりました。その歳入は、地方に学校を建てたり病院を建てたりするのに使われていて、モルジブ人の生活水準・教育水準をあげるのに貢献しています。

しかし、当然、開発が進むといろいろな問題が発生してくるわけで、リゾート客が味わう非日常感とはうらはらに、現実問題としてモルジブにさまざまな課題を突きつけているのも事実です。その問題というのを大きくわけると、一つは労働者問題、もうひとつは環境問題、でしょうか。

労働問題については、一番大きな話題としては、これだけ産業として発展しているにも関わらず、モルジブ人の労働機会の増加にあまりつながっていない、ということです。

もちろん、リゾート周辺ビジネス、例えばおみやげ屋、とか、リゾートに魚を供給するビジネスとか、観光客を運ぶボート業、だとかは市場機会・労働機会増加につながっていて「ツーリズムさまさま」なのですが、リゾート内での労働機会、となると実はモルジブ人よりも外国人の労働者が多いのです。

それは、リゾート経営側としては、サービス業のスキルや経験がない割には高い賃金を要求し、しかも短期でどんどん辞めていくモルジブ人(離職率30%というリゾートもあるくらい)よりも、英語もできて安い賃金であれこれよく働いてくれるインド人やスリランカ人、バングラデシュ人の方が、はるかに使い勝手が良いのです。また、技術を要する職種になると、モルジブ人労働市場には供給がないので仕方なく労働力輸入ということになっていることもあります。この外国人労働者の多用というのも、モルジブのローカルの生活感が見えない理由の一つとしてカウントできるでしょう。

技術のことをいわれてしまうと、モルジブの教育システムに関わる問題になってくるので、「人」が育つには時間がまだまだかかるのだ、とだけいっておきましょう。教育については次の回で特集する予定ですが、ツーリズムに関していえば、将来ツーリズムに関わる仕事に就きたいと思っているローカルの人のために、「ホテルスクール」と呼ばれる専門学校があります。そこでは、日本語やフランス語などの外国語や、ハウスキーピング、フロントデスクでの応対の仕方、日本人観光客に向けた日本食の作り方、など、サービス業に携わる人が必要とされるようなスキルを身につけられるようになっています。

それにしても、ツーリズムによる国際文化交流をよしとしない、とは言っていても、やっぱりツーリストの需要に応えるには、モルジブにはなかった新しいものを取り込んでいかなきゃいけないわけだから、じゃあそこでの良しきものと悪しきものの線引きは一体どこでするんだろう、と思います。

外国人労働者がサービス業就労者の多くを占めている、といっても当然ある程度の割合でモルジブ人労働者だっています。ただ面白いことに、サービス業なんて女性に向いている職業なんだからローカルの女性の雇用機会増加につながっていそうで、いいじゃん、とか思いがちですが、現実はまったく逆で、リゾートで働いているモルジブ人の女性は世間様から白い目で見られるんだそうで、ツーリズム産業はモルジブ人にとってはまったく「男の職場」なんだそうです。

モルジブ人女性がリゾートで働いているとなぜ白い目で見られるのか、というと、それはまさにまたムスリムであること、が関係してきます。

まずたいていのリゾート労働者は、そのリゾートに住み込みになります。女が島に住み込むということは、家を離れなくてはいけないわけで、まず、その時点でダメ。仕事のためとはいえ、女が外泊するなんて、言語道断なんだそうです。なので、それでもリゾートで働かなくてはいけない女の人は、住み込みではなく、毎日船で「通勤」ということになります。通勤距離範囲内、ということになると、リゾートの隣かまたその隣くらいの島でなくては通えないわけで、男の人のように環礁を越えての出稼ぎに出かけるわけにはいかなくなります。そうなると、自分の島の隣かまたその隣くらいの島にリゾートがある確率というのはそんなに高いわけではないので、やっぱり女性の雇用機会増加にはつながらないのです。

もうひとつ、家を空けること以外に女の人がリゾートで働くことが「白い目」につながる理由として、ツーリストの外人をひっかけるんではないか、という先入観がすごいこと。モルジブの国に外国人の血が入ることをよしとしない伝統的理由に基づく先入観があるんだそうです。これもムスリムというか、南アジア圏の封建、というか。。。。ちなみに、ホントに引っかけてしまった人には、「村八分」というのが待っているそうです。六本木あたりで外人ひっかけてばかりいる人は、大変なことになりますね。

では、モルジブ人の男性リゾート労働者なら、文句なく花形職業なのか、というと、まあきっと「簡単で儲かる職業」視点的には花形なんでしょうが、それはそれでいろいろあるそうです。例えば、住み込みという労働形態によって発生している問題があります。

一つは、住み込んで働いている間の留守宅の問題。これは、前回のモルジブ通信にもちっと書いたことですが、環礁をドーニ(船)で越えて行くには、隣の環礁なら3時間程度で着くかも知れませんがさらに遠くなると3日とかかかる場合だってあります。いまや水上飛行機というものがあるので、お金さえあればそれに乗って一時間とかで着くかも知れませんが、そもそもそんなお金があるなら出稼ぎなんかには行きません。なので、リゾート就労者はたいていの場合、いっぺん自分の島を出てしまうとなかなか簡単には帰れないのが現状です。

しかもリゾート側は、スリランカ人などの外国人労働者には一時帰国のエアー代を持ってあげたりするのに、モルジブ人が自分たちの家に帰省するのにはお金を出さないばかりか、緊急に家に帰らなくてはいけない事態が発生しても、帰って良いかどうかの判断は経営者側一存によるのみで、帰りたくても人手が足りないから帰らせてもらえない、とかもあるみたいです。

Addu Atoll(アッドゥアトール)というモルジブの最南端に近い環礁では、あまりにマーレから離れすぎているためリゾートを作るにもコストがかかるしツーリストにとって便も悪いし、というのでリゾートが環礁内にあまりないため、この環礁の男性は他の環礁に出稼ぎに出ているツーリズム就労者が多く、留守宅問題が顕著に出ています。妻同志のレズの問題や、子供たちのドラッグ、アルコールづけ問題など、UNDP&World Tourism Organization (WTO)の2000年のツーリズムレポートでも具体的に環礁名があがるほどの問題となっています。

もう一つ、住み込み現場では(ムスリム的に)大変なことがおきています。そうやってリゾートの従業員アパートに長期住み込みをしていると、生活を共にしている時間が長いため、当然カップルも誕生してきます。でも女の従業員は住み込みではないので、男のカップルってことです。それも前述のツーリズムレポートで出てしまうくらい顕著なんだそうです。ちなみに同性愛はモルジブでは法律で禁じられているので、見つかると逮捕されちゃいます。

ということで、そういった数々の労働者問題の対策として、モルジブ政府では、外国人労働者の数を制限するとか、モルジブ人従業員が一ヶ月に一回自宅に帰るための休みを福利厚生の一環として義務づけるとか、同じアトール内で人を雇うようにしてなるべく住み込まずに通えるような雇用形態を作らせるとか、モルジブ人が長期で勤めたくなるようなインセンティブ(研修システムとか給料がちゃんと上がっていくとか)を作らせるだとか、いまはそれぞれのリゾートの経営方針に任されているところに介入政策を検討しているようです。産業として大きくしていくには、ある程度のコントロールも必要でしょう。


もうひとつのツーリズム発展に伴う問題の大きなくくりとして環境問題があります。

ツーリズムに限らないのですが、開発にいつも伴う環境問題として、ゴミと下水の問題があります。リゾートがたくさん建ってツーリストがたくさん来るようになると、ゴミも増えるし、下水の量だって増えます。いまはどうしているかというと、リゾート会社の責任において各島それぞれで施設の建設・管理をすることになっていて、政府としての一貫したレギュレーション・基準が特にありません。ということは、各島バラバラのスタンダードで処理していることになります。

ということはどういうことなのかというと、もしそのリゾートが悪者だった場合「がっと儲けてハイさようなら経営」をする気になれば、できてしまう、ってことです。環境にやさしくないけど安上がりなゴミ・下水処理システムをとりいれて、どんどん儲けるだけ儲けて、海をさんざん汚しても、政府が怒る仕組みがないし、海が汚くなって取り返しがつかなくなる頃には21年のリース期限がくるからもう用はない、ってことなんですね。

それは極端な例なのかもしれませんが、でもそれに近いことはリゾートも企業である以上起こり得るわけで、そんなことがおきるのを防ぐために、モルジブ政府では、リース制度をやめるとか、リース期限をもっと長くするだとかの政策を検討しているようです。要は、いまは21年というリース期限があるために、企業としては、その期間内でターンオーバーを考えて投資としてきちんと儲けるためには、環境のことばっかりは考えていられないや、ということがあるのですが、それが自分の島となってずっとその島で商売していくことになれば、長期的に投資計画も考えられるし、環境とも共存していきながらのビジネス形態にしなくてはいけなくなるので、かなりsustainableな開発を促進できるということなのです。


ツーリズム発展の問題点としては以上が大きなトピックスですかね。


あと、ツーリズムの発展が社会的に間接的及ぼした変化、というのもあって、それはわたし的にはいいことなんじゃん、と思っていることなのですが、そうやってモルジブ人がツーリズムに関わり他の国の人の文化をみたりする機会が広がったり、そこで得た収入でテレビが買えて衛星放送が見れるようになり他の国のテレビ番組が政府の規制なしで見れたり、コンピューターが買えるようになってインターネットで情報が国堺を越えてゲットできるようになったりすることによって、モルジブ人の社会行動もだいぶ変わってきているそうです。

たとえば、前述のツーリズムレポートの統計ででていたのですが、ツーリズムに就労している若者は他の産業に就労している若者よりガールフレンドと手をつないで街を歩く率が高い、とか。手をつないであるくことが社会行動の変化として統計的に捉えられること自体、ふうん、ってカンジなのですが、それはここはムスリムの国、オープンな男女交際は「白い目」につながる風潮がいままであったものですから、そんな西欧風な愛情表現は古い人たち的にはびっくり、なんでしょう。

まあ、手をつないで街を歩くことがどうこう、というよりも、UNDPの今年のHuman Development Reportでもいわれている通り、健全なコミュニケーション(メディアとか文化交流とか)はその国が貧困を脱出して発展していくために必要不可欠なことだから、そうやって世の中にはいろんなことがあるんだよ、ってことをモルジブの若者が、政府や慣習の枠を越えて、知る機会が増えたことは、モルジブのこれからの発展にとっていいことなんじゃないかと思います。やっぱり知っちゃうと欲しくなって、それを手に入れるためにがんばるのが人間の常でしょ。

わたしが宗教的慣習的規制がある国、モルジブで生活して思うのは、月並みだけど、世の中にはいろんなものやいろんなことがいろいろあるってことを知ってて、そのいろいろを選択できる自由があるってことはかなり贅沢なんだ、ってこと。私たち的には物質的にも精神的にも選択するものがいろいろあってそれが当たり前になっているけど、発展途上国の人たちはいろいろあるってことを知らないから選択できないし欲しいとも思わない、っていうことが往々にしてあるので、みんなもっと知る機会を持てるようになるといいなと思います。

それがツーリズムでも達成することができるんだから、もっと日本人は途上国に海外旅行に行くべきなのだ、ということで、みなさん、モルジブの国を救うためにモルジブへ来てナイスなビキニ着てください。



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Saturday, July 07, 2001

モルジブ通信 3 - モルジブの政治・経済

こんにちは。

モルジブ通信第三号です。

いつもまじめな話ばかりなので、さぞかし仕事しているんだろうとみなさんお思い(?)でしょうが、ちゃんと遊びもやってます。ダイビングでマンタ見たり、クルーズで飛び魚見たり、先々週末はちょっと足を延ばしてスリランカに行ってゾウ見たりとかしてました。ちゃんとリゾートとかでビキニの水着も着ています。


今回は、モルジブの政治・経済について。

モルジブの政治経済を語るには欠かせないのが「地形」という要素。モルジブは、サイパンのマニャガハ島みたいな一周歩いて15分くらいの小さい島が、南北に800kmに広がった国の海域中に1200島も点々とあるので、どうしても問題になってくるのは、島間のコミュニケーション、です。

コミュニケーションという言葉の中には、電話とかメディアとかの意味も含まれますが、国をあげての対応をしているのは、まずは運輸機関のインフラ整備、です。モルジブは古来から漁業の国だったので、船での移動が日常ですが、魚を捕りに行くドーニという船は、ポンポン船に毛が生えただけのようなものなので、首都マーレから遠く離れた島に急病人が出て緊急にマーレの病院に入院しなくてはいけないのに、ドーニで3日もかかっていては、死んでしまうわけです。

まあ、そこには、入院施設が整った病院がマーレにしかない、ということ自体がこれから解決していかなくてはならない社会問題のひとつとも言えるのですが。でも、ということは、200ある有人の島々に一軒ずつ病院を作っていかなきゃいけないってことになっちゃうわけ。それ自体、こんな地形じゃなかったらそんなコストはかからないのに、ってことになります。

もうひとつ「地形」に絡んだ問題としては、モルジブの島々はサンゴから出来ているため、土地が肥沃でない、ということ。土がないんですね。サンゴで出来た島というのは要はカルシウムの固まりのサンゴの死骸で出来ているということなので、農作物がとれるバランスのとれた栄養のある土は存在しないのです。そうすると、モルジブの人たちが栄養のバランスのとれた食事をするためには、すべて輸入に頼らなくてはいけないのです。そうすると外国からまずマーレに輸入され、そのあと、各島々に輸送されることになるのですが、結局前に述べたように、輸送機関のインフラがまだ整っていないばかりに、地方の島で手にはいる野菜などは、高くて新鮮でないものになり、そんなものはべつに食べなくてもいい、という食習慣になり、地方の島々では栄養失調の人がいまだたくさんいるそうです。魚とココナッツだけ食べててもいけないんですね。

ということで、
モルジブの国家開発計画の中で、モルジブの将来をおびやかす早急に対策をしなくてはならない問題として、二つが上げられています。ひとつはその運輸機関のインフラ整備。もうひとつは、これはたぶん宗教的な原因と地形的原因とが結びついていると思われる、人口増加&集中問題。

人口増加に関しては、「現在、国民全人口のうち50%が15歳以下」という数字で、いかに急激に人が増えたか、ということがわかるでしょう。この件については、モルジブの家族・結婚事情特集のまたはモルジブ人の教育事情特集の回にもう少し詳しく触れることにします。

人口集中、というのは、まさに地形的理由に帰するもので、運輸機関のインフラが整っていないため、1)地方に産業が育ちにくく、漁業を離れた人々が職を求めて首都マーレに出稼ぎに来る、2)地方にいい学校がないため、いい教育を求めて首都マーレに移住してくる、の二つが大きな原因で起きている問題です。地方にいい学校を作るにも島間のいいコミュニケーションがないと作れないんですね。病院も同じだけど、建設のためのコストが貧乏なモルジブには負担できないのです。

そしてさらに、その運輸機関のインフラがまだよく整備されていなくてマーレに人口集中が起きた結果、新たな社会問題が発生してきています。

マーレはここ2,3年でほんとによく発達したといわれ、ちょっとした生活にはなんの不便もなく、発展途上国とは思えない生活レベルが維持されています。例えば、テレビ、冷蔵庫などの基本電化製品から、ケイタイ、インターネットなどの近代コミュニケーションツールまで、種類の幅はせまいけど、でも普通に手に入ります。

でも、それが地方の島になると、いまだに一軒の家にひとつのトイレもなく、海で朝のお勤めをしている、だとか、学校にトイレがないので授業中海に走っていくはめになるだとか、驚く話が色々あります。数年前のUNDPの貧困調査では、電話普及率と洗濯機普及率が調査対象になったくらい、地方では手に入りにくいもののようです。それは、輸送コストが加算された上、その島の人たちがそれを買えるくらいの収入がない、という市場が育つわけないグルグル論理になっているのです。

そのマーレと地方の貧富の差、持つもの持たざるものの差(disparityと呼ぶ)も問題となっており、そのギャップを埋めるべくの施策も必要となるのです。

また、出稼ぎにお父さんが出ていってしまって残された家族の中でも問題が発生したりしています。地方の島では仕事がないので取り残された妻たちの雇用機会も当然ないのですが、子育てだけで家の中にこもっているうちに当然つらくなり、ご近所の同じような境遇の妻たちとレズに走る、ということが起きているそうです。ムスリム的にはこれは大変なことです。そして子供たちはドラッグやアルコールにおぼれてしまってこれまた大変なことになってしまっているのです。


ちょっとここで、データ的にものを見てみましょう。

- モルジブのGNP一人当たり 1200 US$  (1999年)
(以前、モルジブ通信1で、GDP一人当たり1000US$いかないくらい、と書きましたが、それはモルジブ政府が発表している、現在の通貨価値を使わずに1985年時点の統一価値で計算されたGDPでした。ここでは、ちょっと国際的に数字を見るために、世界銀行のデータを使っています。)

ちなみに他の途上国の一人当たりGNPの数字(US$)は、
- 南アジア圏
インド 440
スリランカ 820
ネパール 220
- 東南アジア圏
マレーシア 3390
タイ 2010

先進国は、というと、日本 32,030$, USA 31,910$と、単位がひとつ違うわけです。それでもモルジブのGNP伸び率はここ何年かずっと平均7%を保っており、よくがんばっています。それにしても一年間の年収が1200US$って、、、、とてもエルメスなんて買えないわけです。


****
- 政府歳入  20 million US$  
 うち、関税収入が30%
観光税収入が30%
いかにツーリズムが国の収入に貢献しているか、明らかですね。

- 政府歳出 21 million US$
 いちばんは 港湾工事 19%
教育 18%
エネルギー 12%
地方開発   9% 
といったところが目立つところでしょうか。。。 港湾工事というのは、まさに島間の交通の便をよくするために、地方の島々に大きめの船がつけるような港を順番に作ったりしているヤツですね。

- 輸出入取引総金額
輸入 390 million US$
食料 22%
工業材 27%
燃料 12%
消費財 18% 

輸出 76 million US$
鮮魚・冷凍魚・魚加工品 60%以上
縫製品 20%

この輸入額と輸出額のアンバランスさ、と輸出品目の少なさ。このアンバランスもなんとかしなきゃいけない問題のひとつとなっています。それは、モルジブの産業が漁業とツーリズムしかないことに帰していて、しかも二つとも地球温暖化など、外的要因の影響をモロに受けやすい不安定な産業であることも、モルジブの課題となってます。


では、そういった問題・課題を解決するためにどういう政策がなされているか、ちっと見てみましょう。というか、UNDPとして、こういった問題を解決するためにモルジブ政府と一緒にどんな活動をしているか、ですかね。

UNDPのメインとなる援助の目的としては、キャパシティビルディングによる地方の労働機会増加があげられます。

要は、地方の島々にそれぞれ産業を作ることにより、出稼ぎに出かけなくてもそれなりの所得が稼げるように、人を育てることから始めてインフラも含めてお膳立てをしましょう、ということ。とくに女性ができる仕事を増やす、ことにも力が入れられています。

そういった目標でモルジブの事情にあうようにいくつかプロジェクトがデザインされます。

例えばどんなことをしているかというと、私がいま担当しているのは、真珠の養殖をモルジブで始めてみるというプロジェクト。

ツーリズムと漁業の二つの産業だけでは、なにかあった時の打撃があまりにも大きくなるので、国の歳入源としてもっと産業の種類を増やしたい、それが地方にあったら雇用機会の増加につながるのでなお良し、そしてたくさんある海で出来ること、というので真珠の養殖をやってみよう、ということになりました。養殖するのにもちろん人手がいるし、真珠がとれたあと、宝飾品にするのに職人がいるし、それを売るのに流通がいるし、と産業として仕組みができあがればけっこうな数の労働力が期待できるのです。そこには女の人にも出来る仕事があるし。また、タヒチのように国際的に真珠の名産地という名前がもらえれば、観光地としてのモルジブのステイタスもあがるし、養殖場の観光ツアーも出来るわけです。まさに一粒で何度もおいしい計画です。

しかし、まったくいままでなかった真珠の養殖という産業を始めるには、まずいったいどんな種類のカキがモルジブの海にいるのか、の調査から始まります。そのカキの種類によって採れる真珠も変わってきます。また、どうやってカキを採集するか、集めたカキをどうやって育てるか、育ったカキにどうやって真珠の素を埋め込むか。育った真珠をどうやって採るか、とモルジブはなにも知らないわけです。

キャパシティビルディングという意味には、そういった真珠養殖の技術・知識を持っている国からモルジブへの技術・知識の移転、そしてそれをモルジブ人が一人で出来るようになるまで教えながら技術者を育てる、ということが含まれます。一般に、そうしたときにパワー発揮するのが「専門家」として技術を持った方達です。プロジェクトにもよりますが、日本人に限らず世界各国から技術を提供できる専門家が集められています。

いま五年目を迎えたその真珠プロジェクトは、モルジブ人のプロジェクトスタッフが自分たちだけで、真珠の採取が出来るようになったところです。これから、プロジェクトスタッフから地方の島の人たちに技術移転をコマーシャルベースにのるまで順々に行っていくことになってます。

また、その採れた真珠を使って宝飾品に加工することできる職人を育てる段階にも来ています。そしてそのあとその作った真珠宝飾品を流通に流すためのビジネス設計をする専門知識の移転も行われる予定です。ローカルのツーリスト市場と国際市場と、両方を見ながら育っていくと良いなと期待されています。しかしこのプロジェクトはまだ試験的に少しずつやっているもので、産業として動いていくのにはもう少し時間がかかるでしょう。やっぱり、ひとつの産業をイチから育てていくのには時間がかかるのものです。

あと他のプロジェクトとしては、例えば、野菜・果物をモルジブ内で育てる試み。これは土地が不毛なので、水栽培の温室で作るという新技術を外国から協力を得て試しに作ってやってみてます。これも真珠と同じで、地方の島にその温室を作ることによって島の人たちの雇用機会増加、収穫された野菜たちの流通経路の雇用機会増加、そしてモルジブのみんなに野菜たちをいままでの価格よりも安く提供できるようになり、野菜不足による栄養失調を減らせる、と一粒でいっぱいおいしくなるようなってます。

他にも、Atoll Development(環礁開発)としてそれぞれの地方の島の発展を援助するプロジェクトがあったりと、モルジブ政府がいろいろ問題としている課題に対してプロジェクトがデザインされ、解決に向かってUNDPが一緒に動いています。

環境問題についてのプロジェクトとかもあるのですが、それについてはまた今度。

ということで、
そうやって一緒に仕事をすることにより、仕事の仕方自体を国際機関から学んでいくのもモルジブ政府のキャパシティビルディングとなり、将来自立の手助けとなっているのです。


ということで、今回はここまで。




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