モルジブ通信

Sunday, July 22, 2001

モルジブ通信 5 - マイモルジブライフ 


こんにちは。

今回のモルジブ通信は、よく聞かれる「いったいどんな生活しているの?」について。
当然普通の観光客とは違う生活です。モルジブ人の生活めちゃめちゃはいっています。普通のリゾートに行っただけでは、こんなディープモルジブは見れません。またわたしがローカルファミリーの家にホームステイしているって点でも、マーレに一人暮らししている他の日本人よりディープモルジブしている気がします。

ちなみにNYで学生生活しているはずのわたしがなぜモルジブにいるのか、モルジブで一体なにをしているのか、まだナゾだと思っている人がいるらしいので、ちっとここでまた説明を。

わたしのNYの学生生活は一年が終わっていまは夏休み中。あと一年学生生活が残っています。アメリカの大学は五月半ばから八月いっぱいまで三ヶ月以上が夏休みで、新学期が始まるまでなにもすることがありません。なので、学生ちゃんは、その長い休みを使って「インターン」という社会人生活に慣れるためのいわゆる「お試し期間」的な社会勤めをするのが普通です。単位にもなります。

すでに8年も社会人生活やったわたしが「慣れるため」とか「お試し」とかされても困っちゃいますが、ヒマしているのも困るので、インターンでもやるか、ということでやってます。

アメリカの会社ではその「インターン」を受け入れるための制度が整っていて、ちゃんと就職活動のように面接とかありますし研修制度があるところもあります。会社によっては、そこを「青田」の場として使っているところもあって、夏の間きちんと仕事して「こいつはできる」と思われた人は、そのまま卒業後、そこの会社に就職することが出来ることもあります。そういう会社はたいてい給料の払いがいいです。また、会社によっては、インターンを都合のいい金払わなくてもいいバイトちゃん、という風に捉えているところもあります。三ヶ月働いても給料なんてもらえません。なので、よっぽど勉強になる仕事か履歴書に誇りを持って書けるような仕事でないと、なんかうまくぼられた気持ちになります。

で、わたしがいまやっているのは、国連開発計画(UNDP)のモルジブ事務所というところでのインターンです。いままでモルジブ通信で書いてきたような社会問題をなくすためのプログラムの管理・運営する役をもらってます。国連関係のインターンは、「こいつはできる」と思われてもあとの就職にはつながらないし給料ももらえないし、ホントにボランティア精神でのぞまないとやってられないポジションです。まあわたしの場合、もとが広告屋だっただけに、ぜんぜん違う世界が見れて、勉強にはなってますけどね。

というわけで、べつにモルジブで遊んでいるわけじゃないです。勉強しているんです。ボランティアやっているんです。遊んでもいますけどね。

そしてそのUNDPでのインターン生活およびモルジブ生活はどんなんか、というと、オフィスは朝七時十五分から午後二時半まで。朝六時におきて六時五十分に家をでています。わたしが住んでいるのはマーレの隣の島のビリンギリというところなので、ドーニ(船)に10分乗らなくてはいけません。ビリンギリは一周歩いて20分くらいの島で、わたしの家のあるところはドーニ乗り場のまさに島の反対側なので歩いて10分くらいかかりますが、わたしは自転車で通っているので5分です。そしてドーニ10分。マーレについてからオフィスまで、自転車で10分。

オフィスアワーに昼休みはありません。二時半までごはんが食べられなくてお腹が空きます。でもティータイムというのがあって、ちょっと十五分くらい抜け出して、近所のカフェに「ショートイーツ」というものを食べに行くのを許されています。ショートイーツというのはモルジブ人のスナックで、いろいろ種類がありますが、たいてい小麦粉で作ったカワで、魚をほぐしたフリカケみたいのとココナツの実とチリ(唐辛子)をまぜたものをまいて、揚げてあるか焼いてあるか、みたいなもんです。スナックといってもたいてい甘くないです。

甘いのは、ドラヤキの皮みたいのかドラヤキの皮にココナツが混ざったものかくらいです。ときどきフレンチトースト的なものをみかけることもあります。あ、でもメキシカンの「チュロ」的な小麦粉と卵と砂糖を混ぜたヤツを揚げた揚げパンの小さいモノもあるし、ドラヤキサイズのホットケーキみたいにふかふかしたモノもあるわ。やっぱけっこういろいろありますね。でもたいてい、甘いモノ系全種類が一堂に会することはなく、そういうモノは毎日一種類か二種類くらいしか置いていてくれません。

わたしは甘いスナック好きなのですが、カフェではマイナーな存在です。だってカフェは男の社交場なんだもの。どこいってもモルジブ人の女の人がカフェにいるのを見たことがありません。(観光客が来るような西欧風のいわゆる私たちのいう「カフェ」的な場所には女の人もいますけどね)。こっちのカフェは、外からはなんの店か中が見えないようになっていて、入ると薄暗くせまい中にデパートの食品売場みたいなのの小さいバージョンのショーケースにショートイーツが並べられていて選べるようになっています。選んで席について「コーヒー」か紅茶を頼んでそれを食べます。こっちの「コーヒー」とはインスタントコーヒーに粉末ミルクをまぜたカプチーノ的飲み物のことです。ちなみにこっちの「牛乳」もインスタント牛乳、というか、粉末から作って飲みます。一般家庭に牛乳パック的「生」は存在しません。

お昼ご飯はたいていお家に帰ってから、です。なので仕事がたいてい二時半過ぎに終わって、インターンには残業なんてないのでさっさと帰って三時過ぎ。それからごはん、です。わたしが住んでいるところはローカルファミリーのお家なので、家に帰るとごはんが用意されています。

ごはんのメニューは、毎日カレー。ツナカレー、リーフフィッシュカレー、ベジタブルカレー、パンプキンカレー、ブレッドフルーツカレーなど、中身は色々あり、カレーソースにもケチャップがちょっとはいったヤツ、ココナツミルクがちょっとはいったヤツなど、いろいろあり、組み合わせによってバリエーションがでています。カレーを食べるご飯の他に、ロシ、という小麦粉と水でこねて焼いて作るクレープ状のモノもあります。味はナンみたいなのですが、役目はクレープで、カレーを食べるのに使います。あとはときどきガルディアという日本食でいうところのカツオ出しのスープみたいなモノもでます。それは辛くないし、味もシンプルで、素材の味で勝負なので、日本人にはたまらないです。お吸物みたいなものですが、カレーのようにごはんにかけて食べます。

カレー以外に、キャベツの千切りのマヨネーズ和え、か、トマトを切ったモノ、キュウリを切ったモノ、が典型的な生野菜です。レタスとかは高価すぎて普段の食卓にはのりません。すべて輸入ですから。フルーツはバナナくらいですが、たまにオレンジやリンゴも出ます。でもそれも高級な食べ物です。南の島だからフレッシュフルーツジュースがおいしいんだろう、とか思われがちですが、そんな高級なモノ一般家庭ではでません。ここんちでやったウエディングパーティーの時でさえも、濃縮ジュースのもとを水で割ったジュースでした。ひと昔あった、お中元によくあるカルピスとともについてくるオレンジジュースのもとみたいなモノです。水でさえも高価な飲み物なので、それに味がついているとなるとさらに高級感が出ます。

ウチにはいつも家族のごはんを作ってくれる子が二人います。シルミナとアシア。シルミナは20歳、アシアは13歳。二人はファミリーではないのですが、ファミリーの知り合いの子供だそうで、より高い教育を受けようと、マーレの学校に通うために地方のアトールから出てきています。ただでこの家に泊めてもらう代わりに家事の手伝いをしています。今度のモルジブ通信の教育事情特集でも書きますが、これはマーレではごく普通のことで、よりよい教育を求めて、アトール(地方の環礁)の教育熱心な親たちは子供をマーレに送り出すのが普通で、その時の住居を知り合いに頼り、無料でおいてもらう代わりに労働を提供するんだそうです。ここのウチにはもう一人、アフマドという19歳の男の子もアトールから出来ていて、家のメンテナンス担当として働いています。それ以外にご主人のお友だちで、アトールで「ガージ」という裁判官のような立場のえらい人も、数週間前から英語を学ぶためにマーレに出てきてここんちに泊まっています。いまこの家にはわたしもあわせて総勢13人が住んでいます。

わたしが住んでいる島、ビリンギリは「環境にやさしい住宅用の島」として、もともとリゾートがあった跡地に開発されました。車は島に公共用としてタクシー2台とトラック1台しかありません。バイクは存在しません。みんな歩きか自転車で移動します。島の周りが全部ビーチで、ウチの前もビーチです。オフィスから帰ったあと、なにをしているかというと、たいていモルジブ通信書いているか、メール書いているか、屋上で潮風に吹かれて本読んでいるか、前のビーチで泳いでいるか、島の反対側のビーチでシュノーケリングしているか、です。こんな生活していると東京とかNYとかの都会の生活に戻るのが怖くなります。

都会といえば、モルジブ一都会のマーレは、道路は全部舗装、ここ二、三年の間に高層(といっても5-6階建てくらい)ビルも建つようになり、どんどん都会の街らしくなってきました。10数万人住んでいるところに郵便局は一軒だけ、とか、いろんなものの選択の幅も数も少ないですが、とりあえず先進国の生活で必要なモノはなんでも手に入ります。なので、マーレを見ているだけでは、発展途上国に見えません。それもこれもここ数年の急激な経済発展によるたまものだそうです。それにツーリズムが大きく貢献しているのは言うまでもないです。

でも地方の島々で仕事して生活してきた日本人の協力隊員的には、マーレのモルジブ人はここ数年で妙に金を持って都会派ぶってスレてきているから、マーレに来る度に地方に帰りたい、と思ってしまうそうです。地方の島のモルジブ人は人が良いそうです。それって、日本だって東京の人は冷たい、田舎の人は温かい、とかいうのと同じですね。

わたしが住んでいるうちのファミリーは都会の人で、しかも金持ちですが、人は良いです。一般的に、モルジブ人はきれい好きだし、「和」を大切にするし、義理人情に厚いし、世間様を気にするし、すごい勤勉でよく働くし、教育熱心だし、なんかいろんな意味で日本人に近い精神を持っている気がします。海に囲まれた島国で他国の影響をあまり受けてこなかったという似たような歴史を持っているからかしら、なんて。

しかも、モルジブ人の言葉であるディベヒ語も日本語に似ています。たとえば、主語をはっきりさせないあいまいさとか、一つの単語だけでも会話が通じるところ、文字は発音を表すだけ、とかとか。。。。「アフマド君どこいった?」と言いたい時、英語だったらWhere is Ahumad? とかになりますが、ディベヒ語だと、「アフマド、コバ?」となります。be動詞とか関係ありません。順番を「コバ、アフマド?」と変えても意味が通るところもなんか日本語ちっくです。英語で順番適当に変えるってのはあり得ませんね。

もう一つ、例えば、「マーレに行ってくる」って言うとき、英語だったらI am going to Male'.と、「I(わたし)」がマーレに行くっていう、日本語には入っていない主語が必ずついてきますが、ディベヒ語的には「マーレ、ダニ(行く)」と言うだけですみます。「キミ、マーレ行くの?」というのも「マーレ、ダニ?」ですみます。慣れると英語より、ディベヒ語の方が楽になります。わたしもこの二ヶ月で簡単会話が出来るようになりました。わたしの英語もディベヒ入るようになってきました。

週末は、ここのウチにいろんな親戚の人が訪ねてきます。ビリンギリというのは、マーレに住んでいるローカルの人にとっても週末ちょっとビーチに行こうか、という対象になってます。日本で言うところの湘南みたいなもんですかね。か、お台場かな。なので、マーレからいろんな親戚の人が週末のたんびにここのウチに遊び&くつろぎにやってきます。ただでさえ普段から人の出入りがはげしく、平日オフィスから帰宅すると知らない人がリビングに座っている、とかめずらしくないので、ちっとやそっとでは驚かなくなりましたが、それでもここへ来てすでに2ヶ月経ったいまでも全部の親戚のカオを覚えることが出来ません。というのは、ここのご主人のナシームの兄弟は10人、奥さんのアビダの兄弟は5人、そしてそれぞれ平均5人の子供を持っているので、それが入れ替わり立ち替わりなんか似たようなカオしてばらばら来るので、ぜんぜん誰がどの家の子で誰の兄弟だったかなんてとても覚えられないわけです。にっこり「はろー(^ ^)」、なんていかにもキミが誰だか知ってる的にアイサツとかはしてますけどね。

そんな大人数の家族はモルジブ人では当たり前で、しかも習慣として親戚を大事にするため、そういった親戚づきあいがけっこう大変なようです。モルジブ人の家族・結婚事情についてはいつかのモルジブ特集で書ければと思っているのですが、若くして結婚して相手方の家に入った嫁さんはたいてい家族づきあいが重荷で離婚につながるようです。モルジブ人の離婚率60%という世界レベルでもかなり高い数字が、その家族づきあいの大変さを物語っているでしょう。

この間、六月にナシームのお姉さんの二番目の息子が24歳にして結婚しましたが、離婚率60%と知っているわたし的には複雑な気持ちでした。しかも、その男の子、嫁さん一人自分の家族の中に置いて、七月からマレーシアに留学しちゃったんです。嫁さん、義理の家族に囲まれて一年一人でやっていかなきゃいけないそうです。これはやっぱり、離婚につながるか、、、、?。

ここの国の週末は、金曜日と土曜日で、オフィスのある平日というのは日曜日から木曜日です。それは金曜日がイスラムの休日にあたるためで、金曜日はちょっとスペシャルな日です。いつもより長めのお昼のお祈り時間と、普段はバラバラにとるランチも、金曜だけは家族が一堂に会して食べます。訪ねてきた親戚もあわせて、ね。そして金曜日用のごはんが用意されます。その日の主食はカレーではなく、たいていカレー味ピラフと焼いた肉系(ソーセージとかサラミとか)、唐揚げした魚(これは日本食でもあるのとまったく一緒)、ココナツ系のデザート。この日はスペシャルなので水以外にオレンジジュースとかコーラも食卓に並びます。

でもテーブルが足りないので、男の人が先に食べ、女の人があと、という順番は変わりません。それでもたくさん親戚がいるときには、男の人の中でも優先順位のランクがあり、年の順で子供はあと、でも男の子供は女の人グループの前に食べる、女の人グループの中でも年の順だし、前述したアトールから出てきている親戚じゃないシルミナとかアシアとかは一番最後にご飯を食べるので、一番最初グループで食べるわたしとは、一時間くらい時差があります。なので、間に食べた人たちの量によってはシルミナたちまでごちそうが残らないこともあるかもしれません。ここになんとなく貧富の差を見る気がします。


あとは、水がすごい高い話だとか、天井扇風機の偉大さだとか、まだまだ書きたいことはいろいろあるのですが、文字量が多くなってしまったので、今回の通信はここまで。

興味のある人はメールで質問ください。写真もホントはいろいろあるんだけど、いっぱい送ると重いしね。

今後の特集予定としては、モルジブ人の教育事情、モルジブのメディア事情と若者文化、と続きます。また、八月のアタマに地方の島に行くかも知れないので、そのご報告通信かな。あとはモルジブの環境問題についても質問が多いので書いてみたいです。「ホントにモルジブは沈むのか!?」についても。

どのみちモルジブには八月の半ばまでしかいないので、あと何回かで、モルジブ通信も終わりです。モルジブ旅立っても書き続けることが出来ないことはないのですが、データ的なものにアクセスできなくなってしまうので、どうかな、と思ってます。あとは、都会に戻ってしまうともっと楽しいことがいろいろあるので、モノかいてる時間がなくなるかも、って気もするしね。

とりあえず、今回はここまで。

ではまた。

n

0 Comments:

Post a Comment

<< Home